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/挑人/
ウエスト
西 康雄
/Yasuo Nishi/
/Profile/
近畿大学経営学部卒。1963年生まれ。自転車が大好きでよく乗っていた。「走っている時の爽快さ、自転車との一体感がたまらなく好きだった。」中学生ぐらいから自転車の部品の形や色に興味をしていていた。商品のデザインに対するこだわりはこの頃から醸成されているのかもしれない。
開発商品
Agaho(アガホ)
開発商品詳細はこちら
STORY
/挑人ストーリー/
お客様がはじめに触れるドアノブに「おもてなしの心」を
課題
現在、西は三代目の社長である。当時サラリーマン生活に終止符をうち、ウエストに入社。ウエストは建築金物の老舗として業界内では知れ渡った存在。その時1933年個人創業以来の歴史が重くのしかかった。そして、自社の商品をじっくりと観察する。「ドアノブが空間デザインの邪魔をしている。」当時高級感を出すデザインとしてごつごつする商品ものが市場出回っていた。今後益々ニーズが多様化してくる。もっと違うデザインを求める人が出てくるはずだ。西は立ち上がった。脱OEM※体質を掲げ、市場に打って出ることのできる自社製品の開発を自らに課したのだ・・・
---※OEM:Original Equipment Manufacturer相手先ブランドで販売される製品を製造すること。
Chapter1
【OEM体質からの脱却・・・その秘策は「おもてなしの心」】
他とは違った自社製品を出すにはどの分野がいいか。それによって勝負は決まる。
西はドアノブを選んだ。
当時、ドアにこだわる人はいてもドアノブにまで気を回す人はいない。
その結果、どのドアノブを見てもお仕着せの決まりきった形式のものばかり・・・
しかし、ドアノブは家にやってきたお客様が一番初めに触れる部分。
手に触れた瞬間に、「おもてなしの心」をあらわせるようなドアノブを作りたいと考えた。
それができれば、新たな市場を自分達で作り出せる。
西の挑戦が始まった。
Chapter2
【集まらない賛同者】
西はまず社内で有志の賛同者を探した。
ドアノブの可能性を熱っぽく語った。
さらに『OEM体質からの脱皮がなければ、永続できる企業になれない。』と語った。
しかし「ドアノブにお金をかけてまでこだわる人なんかいるはずがない。」そんな声が大半だった。
そんな中でも少ないながらも面白いと思ってくれる社員がいた。
まずは彼らとやるしかない。
そして市場に問うてお客様の反応さえわかれば、分かってくれるはず、そう西は信じていた。
Chapter3
【商品の心をあらわす素材選び】
西はドアノブの素材として、アルミを考えた。
当時、アルミは自転車素材の主流だった。
西自身、自転車が大好きでよく乗っていた。走っている時の爽快さ、自転車との一体感がたまらなく好きだった。
その一体感こそ、西の求める「おもてなしの心」ではないのか、と考えたのだった。
一口にアルミといっても色々ある。色、硬さ、手触り・・・
金属なのに冷たくならず「おもてなしの心」をあらわせる素材選びに苦労した。
高価なものを使えばすぐに再現できる。
しかし、販売するからには量産を意識する必要がある。
加工のしやすさ、リサイクルのしやすさ、流通性も重要なポイントだ。
数々の試行錯誤を繰り返していきついたのが、
メッキ加工を施さずアルミの質感を活かした現在の材料であった。
Chapter4
【デザインと経営のジレンマ】
次の関門がデザインだった。
デザイナーからあがってきたデザインは確かに素晴らしい。
しかし、経営者としての西はいくらいいデザインでも量産化できなければOKを出せない。
金属の冷たさを出さず、素材感を活かすにはシンプルなものが一番。
しかし、シンプルなものは量産に向かない。ネジや合わせ目が見えないように加工する必要があるからだ。
デザイナーとの何回にもわたる議論のすえ完成したのが、これまでにまったくなかった形だった。
それは、古来、貴人を神社に迎える際に施された盛り砂のフォルムだった。
その形といい精神性といいまさに西のイメージ通りだった。
当初から西は、「形は空間デザインを邪魔しないがどことなく凛としているようなイメージ」を追い求めていた。
Chapter5
【商品にとどまらないチャレンジ精神】
西はこのまったく新しいドアノブにAgahoという名前を付けた。
ギリシャ語で「親しい人を迎える、愛する、満足する」という意味。
その商品性だけでなく、広告まで業界の常識を覆した。
高いデザイン性と精神性を表した広告は、大手企業が常連の『日経アーキテクチャーの広告賞』を受賞するほどだった。
さらに西はこの自信作を世に問うために『グッドデザイン賞』に応募した。
「賞は取れるだろうと思っていた」と語る予言どおり、中小企業庁長官特別賞を見事に獲得。
この勢いを借りて、ドアノブから住環境を変えるという壮大な試みは今始まったばかりだ。