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/挑人/
三菱重工業
日浦 亮太
/Ryota Hiura/
/Profile/
1972年3月15日生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科物理系システム工学分野博士前期課程を修了後、三菱重工業入社。高砂研究所を経て現職。学生時代は、ソフトウエア開発のベンチャー企業で深夜まで開発のアルバイトに従事。「趣味は、スキーやテニス。」
開発商品
wakamaru[ワカマル]
開発商品詳細はこちら
STORY
/挑人ストーリー/
子供・女性・高齢者に教えられた「理屈ぬき」の開発
課題
2000年7月7日。
21世紀に向け新製品・新事業を社内で立案する社内プロジェクト「フロンティア21」が創設された。
1999年度の連結決算で大きな赤字を出した危機感があったのかも知れない。
若手社員を中心に自由な発想で新商品・新事業の構想を立ち上げるべく検討チームを発足させた。
その中に「家庭用サービスロボット」があったのだ。
そのほかにも、そうした“三菱重工の初の試み”に全社員が応え、1000件以上のアイデアが応募された。
こうして「家庭用サービスロボット」検討プロジェクトがスタートを切ったのだが・・・。
Chapter1
【「やめときましよう。」】
高砂研究所にいた、日浦は、「家庭用サービスロボット事業」の相談を受ける。
日浦は答えた。「やめときましょう。」
いいかげんなやり取りではなく、「家庭用サービスロボット事業」の技術的な困難性を心底理解しているからこそ出た言葉だった。
そんなころ、ロボット技術を有する神戸造船所にて事業性を検討することとなった。
神戸造船所には、原子力発電プラントなどの検査やメンテナンス・保守を行うロボット技術を有していた。
ロボットを知り尽くしている“挑人の生みの親”長島に白羽の矢があたる。
しかし、長島も思った。
「家庭用??? 何をいうねん。あほなことを。」
Chapter2
【「役に立つかも・・・。」そんな心境の変化が・・・】
そんな長島は、ある場面に遭遇して思った。
「役に立つかも知れない。」
長島の目の前に、ロボットを見て、触って喜ぶ高齢者の姿があった。
子供や女性も楽しんでいる。
長島は思った。
『理屈ではない。』
三菱重工業では、ほとんどのお客様は、法人で、個人ではない。
法人は合理性で動くが、個人は感情で動く。
そのことを思い知った瞬間だった。
“老人の笑顔”が、長島を揺り動かした。
「何かが出来ることだけがロボットではない。人の話相手になるような人間と共存できるロボットであれば・・・。」
1000名以上年代別に意見を聞いたアンケート調査でも、高齢者層は、【話相手としてのロボット】を求めていた。
Chapter3
【社長直轄プロジェクト正式発足。】
2001年10月。
長島を筆頭に、10数名の開発プロジェクトがスタートを切った。
開発メンバー・企画メンバー合わせて約10名だった。
実は、そのメンバーの人選は、全て長島に託されていた。
「プレッシャーになった。」
長島は当時を振り返る。
既存事業の第一線で働く有能な社員を新規事業に振り向けるのは、通常、その上司からの反発が予想される。
しかも本人の了解が得れないと進まない。
しかし、求める人材がひとり、またひとりと集まっていった。
初めて、「社長直轄プロジェクトの重さを感じた。」瞬間だった。
そして、快諾した男の中に、挑人の一人日浦がいた。
Chapter4
【開発の裏側とは。】
2002年には、シャープ液晶TV『AQUOS』のデザインを手がけていることで知られる喜多俊之氏も合流。
基本コンセプトに合わせた開発がスタートした。
デモ機の製作・高齢者施設での意見収集・一般家庭向けに定め、自律移動やネット対応などの性能も固まる。
コミュニケーションに欠かせない音声対話技術も開発した。
2003年4月には展示会に出展。
2003年度のグットデザイン賞にも輝く。
開発は更に続き、性能上の問題点をひとつずつ丁寧に潰していった。
【家庭用=安全性第一・安全基準の厳格化】
彼らの脳裏には、常にあったことはいうまでもない。
慎重の上にも慎重を期していった。
「“人”も“もの”も絶対に傷つけない。」
Chapter5
【量産スタート~家庭用ロボット「wakamaru」誕生。】
そして、苦労の末、2005年9月16日、家庭用ロボット「wakamaru」が誕生した。
都内23区在住者かつ100台限定だ。
価格は、1,500,000円。
しかし、これは100台で採算のとれる価格ではなかった。
勇気がいる決断であったことが、垣間見える。
その“積極的なアクション”が、“意外なリアクション”を生むことになる。
法人からの問合せが殺到したのだ。
「わが社の受付で使えないか。」
「展示会の案内役として使いたい。」
「イベントに出演して欲しい。」
現在は、家庭用ではなく、法人ニーズに応えレンタル契約をしている。
今日も、日本全国で10人?ほどの「wakamaru」が元気に働いている。