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/挑人/
富士フイルム
中村 善貞
/Yoshisada Nakamura/
/Profile/
1958年12月21日生まれ。京都大学大学院工学研究科修了。大学院時代から有機化学を研究し、その経験を活かして富士フイルムに1984年に入社。入社後は写真用フィルムやプリント材料用の素材や製品開発の研究部門に所属したのち、ライフサイエンス研究所へ。商品化に向けた富士フイルムの技術の応用を目指し、日夜研究に勤しむ。
開発商品
アスタリフト(ASTALIFT)シリーズ
開発商品詳細はこちら
STORY
/挑人ストーリー/
“Why FUJIFILM?”~フィルムと化粧品の意外な関係性とは
課題
富士フイルムといえば写真フィルム。
写真の世界に魅了され、多くのカラーネガフィルムを今でも手元に残している人も少なくないだろう。
しかし、2000年頃からデジタルカメラが驚くほどの速さで世に広まった。
現在では、携帯電話にもカメラ機能が搭載されるのが一般的になっている。
しかし、富士フイルムが世界で初めてデジタルカメラを開発した、という事実をご存じだろうか。
1988年、富士フイルムがどの企業よりも先行してデジタルカメラの開発に成功する。
デジタル時代の到来を予見して、カメラ業界における一ブームをいち早く作り出した。
写真フィルムの技術、カメラの技術、デジタル機器の技術・・・
富士フイルムはそれぞれの分野で独自技術を開発し、応用することによって、液晶ディスプレイ材料や医療機器などにも活動範囲を広げていった。
そして2007年、常にチャレンジを続ける富士フイルムが、ついに化粧品を発売する。
「なぜ富士フイルムが?」
その謎の答えを握る中村の、化粧品開発にかける想いを詳らかにする。
Chapter1
【QOL(“Quality of Life”=「生活の質」)の向上にかける想い】
富士フイルムには数多くのヒット商品が存在する。
レンズ付きフィルム『写ルンです』、インスタントカメラ『チェキ』、デジタルカメラ『FinePix』・・・
常に新しい技術を追い求め、新規事業として確立してきた。
そして2004年、富士フイルムは中期経営計画「VISION75」を策定。
富士フイルム社内の構造改革を断行すると共に、新たな成長戦略を構築し、経営の強化が行われることになった。
新たな成長戦略の一環として研究開発体制が再構築され、「富士フイルム先進研究所」が新設される。
富士フイルムが持つ多様な技術の融合による、新たな価値の創出を目的としている。
もともと富士フイルムには何十年にも渡って築き上げられた“メディカル事業”や“ライフサイエンス事業”が存在する。
それらには、富士フイルムが写真フィルムの開発によって蓄積されたコア技術が応用されているのだ。
コア技術を磨くことによって得られる新たな技術。
それらの技術の組み合わせによって、富士フイルムが目指すべき企業像が位置づけられた。
「予防~診断~治療」の全領域をカバーする【トータル ヘルスケア カンパニー】だ。
そんな中、写真フィルムの研究に携わってきた中村らが持つ技術が注目を浴びる。
“ライフサイエンス事業”ではもともと血液検査など、診断領域の製品開発を中心に行っていた。
しかし、トータルヘルスケアの中の予防領域に写真フィルムの技術を応用し、「より高い機能を持った基礎化粧品(スキンケア)」の開発が開始される。
写真フィルムの半分はコラーゲンでできている。
そして、写真フィルムは発色の為の粒子や光を感じる粒子などが含まれた多数の層からできている。
人の肌の構造は写真フィルムとの共通点を持っていた。
人の肌は真皮にコラーゲンを含んでいる。
人の肌にはさまざまな機能の異なる細胞が存在する。
長年、写真フィルムの研究に心血を注いできた中村。
彼にとってスキンケア化粧品の開発は新たな技術を確立するための、またとない機会となる。
Chapter2
【商品化の難点と葛藤】
開発が始まった当初、2004年。
いくら写真フィルムが人の肌の構造と似通っていると言えども、中村にとって化粧品の開発は初めての経験だ。
今までの写真フィルムの開発の経験が生かせると想像できることは多い。
しかし、化粧品には実際に使用する際の使い心地など、感性に左右されるファクターも含まれる。
どのように開発を進めていけばよいのか、どういった点がお客様の不満につながるのか。
中村は頭を悩ませた。
それだけではない。商品を業界の中でどのように位置づけていくのかも決めなければならなかった。
白熱した議論をチーム内で繰り返す。
「富士フイルムはもともとお客様の手に直接届く、写真フィルムを長年作ってきた会社だ!」
「写真フィルムと同じように、お客様の手に直接届く製品を作っていきたい!」
化粧品が持つべきファクターを詰め、議論を繰り返し、商品イメージが固まっていく。
「なぜ富士フイルムが化粧品の開発を行うのか」=“Why FUJIFILM?”
中村は、自身が持つ技術を追求するとともに、これから開発する化粧品とのすり合わせを進めていった。
人の肌の状態を左右するのは、真皮層に含まれるコラーゲン。
コラーゲンによるトータルなケアを目指すためには、コラーゲンを補うだけでなく、体内でコラーゲンを生み出し、さらに生み出されたコラーゲンが分解されることを防がねばならない。
【3種のコラーゲン】を配合するだけではなく、抗酸化力の高い【アスタキサンチン】を富士フイルムが持つナノ技術で、肌の奥まで届ける。
そしてついに、中村たちが頭を悩ませ、富士フイルムが持つ技術を結集したアスタリフトシリーズが完成する。
Chapter3
【“Why FUJIFILM?”を訴える必要性】
中村たちはアスタリフトの社内キャンペーンを行い、社内での反応をはかった。
各事業所を回り、アスタリフトの紹介をする。
「なんで富士フイルムが化粧品を?」
多くの社員から挙げられる声。
中村らが追求した“Why FUJIFILM?”
自分たちが疑問に思ったことだからこそ、誰もが疑問に思う。
中村は、富士フイルムが持つ写真フィルムの技術と共に、これまでの開発の経緯を説明していった。
開発で議論を重ねた“Why FUJIFILM?”
写真フィルムで培った、コラーゲンや抗酸化についての知見とナノテクノロジー。
その技術を用いて完成したアスタリフト。
アスタリフトがどのような機能を持ち、どのようにお肌に良いか、難しい言葉で説明することは簡単だ。
しかし、化粧品は実際に使用して初めてその効果を実感できる商品だ、ということが世間一般の認識だ。
商品について理解してもらう。
実際に使用してみてもらう。
理解され、その効果が実感されるからこそ使用率もアップする。
そして「周りに勧めたい商品」として、社員の間で口コミでアスタリフトの良さが広がりはじめる。
この経験を通し、アスタリフトの販売には実際に使ってもらう以外にも、“Why FUJIFILM?”の説明が必要だということが分かる。
Chapter4
【“異業種”の難しさ】
「“Why FUJIFILM?”を説明し、理解してもらった上で購入してもらう」
アスタリフトのマーケティングを担当した藤巻は、この難しさを痛感する。
異業種であるがゆえに、どのように商品の良さをアピールすればいいのか分からない。
【肌の悩み】とはすなわち【女性の悩み】
「異業種」という難しさに加え、「女性向けの製品」という難しさも加わる。
考えてもいなかったようなことを考えていかなければならない。
藤巻はどのように販売していけばいいのか、思いあぐねる。
まずは実際に自分でも製品を使用し、その効果を実感する。
そしてお客様にも使用してもらい、良さを実感してもらう。
追求した“Why FUJIFILM?”の答えを明確に伝えていく。
そういったことを繰り返し、藤巻は着実に認知向上に努めた。
その活動が実を結び、右肩上がりで人気が上昇する。CMで大々的に広告を打つ。
アスタリフトは急激にその知名度を高めていった。
Chapter5
【より多くの方に使っていただきたい】
アスタリフトが一商品として軌道に乗ってくると、自然とお客様との通じ合ってくるのが分かった。
お客様の「何で富士フイルムが化粧品なの?」から「あ、これいいかも・・・!」に変わる瞬間を目の当たりにし、大きな喜びを覚える。
そして、実際に使用していただいているエンドユーザーから集められた『ありがとうアンケート』。
「使い出してから、肌が今までとは違っていると言われます」
「開発して下さった事に感謝します」
などの感想が寄せられた。
アンケートを始めてから続々と集まる喜びの声。
「やって良かった・・・!」
中村は無類の喜びをかみしめた。
商品化してから1年半は通信販売と直販店でのみ販売を行っていたが、
2008年春から一部のドラッグストアやバラエティーショップなどでの販売を開始する。
同時に、より多くの方の悩みに応えるためにラインナップを拡充する。
体の外側から栄養分を補給する従来の化粧品に加え、
体の内側から肌の状態を改善するサプリメントもシリーズに加えた。
そして2008年9月。
一般店舗でも購入できるようになり、爆発的なヒットを巻き起こしている。
事業参入からわずか2年で達成したこの状況は、中村、藤巻をはじめ、
研究、開発、営業など各部門の多くの社員が濃厚な話し合いを行ってきた成果といえる。
“Why FUJIFILM?”の明確な答えを持つ中村は、アスタリフトを通して逆に世に問いかけている。
「“Why FUJIFILM?”なんだと思いますか?」
そのことによって、アスタリフトはより一層、注目を浴びることだろう。