- ホーム
- 挑人ストーリー一覧
- 粉末ガラス : 日本山村硝子
/挑人/
日本山村硝子
田口 智之
/Tomoyuki Taguchi/
/Profile/
1963年生まれ。同志社大学工学部(化学専攻)卒。学生時代は、ウィンドーサーフィンやテニスに汗を流す。1986年4月、1987年7月前身のニューガラス研究所設立にあわせるかのように入社。ニューガラスカンパニーの趨勢の一部始終を知ることとなる。
開発商品
粉末ガラス
開発商品詳細はこちら
STORY
/挑人ストーリー/
“0”(ゼロ)からの出発。~何か新しいことを。~
課題
ニューガラス研究所の前身である、株式会社山村R&Dは、山村徳太郎社長(当時)の指示で設立された。
『ガラスの優れた機能性を活かし、容器だけではなく、何か新しい可能性に挑戦せよ。』そんなメッセージが聞こえる。
田口は、大学を卒業し、日本山村硝子株式会社に入社した1986年10月、なんとその山村R&Dへの出向を命ぜられた・・・。
入ったばかりの新人を取り巻く環境は、会社にとっても新しい挑戦のスタートだった。
Chapter1
【1987年7月、ニューガラス研究所発足。】
当時のメンバーを見ると、ニューガラスに対する期待の大きさが伺える。
小川昇(現、特別顧問)・谷上嘉規(現・常務取締役)・栗林秀行(現・取締役)・・・他、新人・田口を含め4~5名のチームだ。
1987年7月ニューガラス研究所が発足した。
最初から順風満帆というわけではない。
兵庫県加古郡播磨町・運送会社の2階が事務所だ。
新人・田口は、何でもやった。
それが、研究・開発における姿勢を養うきっかけになったことは言うまでもない。
当時は、研究テーマもなかったので、国内留学として大学研究室に研究生として入ったり、友人関係などのつてに頼るなど、
「開発テーマ」を決めることにも一苦労した。
『実際、全員技術者集団で、マーケティング経験者はゼロ。“どうしたらいいの?”が本音だった。』田口は笑う。
Chapter2
【早すぎる危機・・・そして一筋の光が】
そのような状態が続く中、1990年・鳴尾浜プラントも建設された。
会社の不退転の決意が感じられた。
しかしながら、実際に量産できるようなものは、ごくわずか。
事業として呼べるものではない。
ガラス瓶の製造をコア事業にしている日本山村硝子の現場からは心無い声が聞こえた。
『何やってるんだ!?』
『金ばかり食いやがって!』
『そんなニューガラスなんてものにならないのに。』
そんな声を耳にしながら、田口は思う。
「会社が我慢してくれている。私たちは辛抱して地道にやらないと・・・」
決心をより強く固めるのだった。
そんな頃、日本では、携帯電話の需要が爆発的に増え始めたのだ。
Chapter3
【携帯電話・プラズマディスプレィ・パソコン・・・誰もが知る商品の裏で。】
とうとう転機が訪れた・・・。
今まで蒔いてきた種が、芽を出してきたのだ。
■携帯電話
携帯電話の需要が増えるということは、その中に入っているコンデンサーも増える。
セラミックコンデンサーが増えるということは、数%入っている粉末ガラスの需要が増えるのだ。
※コンデンサーは、異常な電気の流れを止めて蓄積するための場所。今は複雑な機能や操作が多いから、たくさんいるのです。
ひとつの携帯電話に、セラミックコンデンサーは約200個。現在のワンセグ対応機種などになると約800個も使用されているのだ。大きさも1.6mm×0.8mmから始まり、1.0mm×0.5mm、0.6mm×0.3mm、現在では、0.4mm×0.2mmのものまである。
高機能小型版になっているのだ。
■プラズマディスプレィ
現在の収益の柱の一つであるPDP向け。
現在では、一定の需要があるが、最初は、液晶をはじめとした様々な方式が多岐にわたっていた。
不確実性が高いため研究自体をやめてしまうという案もあったが、谷上嘉規さん(現・常務取締役)を筆頭に粘り強く商品化にこぎつけた。
■パソコン
ハードディスク・磁気ディスク用ガラス基板。
高速回転するものなので、うねったりしていてはだめで、ガラスのもつ平坦性や堅さ・強度が非常に合っていた。試作だけも10万枚/月の生産と大きな可能性が見えていた。
(ミノルタ・現コニカミノルタと合弁会社を設立するが、後に日本山村硝子は撤退。)
Chapter4
【生産能力も7倍に。】
プラズマディスプレィパネルなどに使われる粉末ガラス。
需要は増える一方だ。
需要が増えれば、生産能力が問われることになる。
2000年12月 第一工場竣工。
2004年06月 第二工場竣工。
2006年08月 第三工場竣工。
生産設備の自動化は、大幅なコストダウンにも寄与し、
特筆すべきは、2005年~2007年までの三年間でなんと生産能力が7倍に増えているのだ。
その間に、生産技術の力も上がったことはいうまでもない。
約10年前は、あきらめかけた商品の姿がここにあった。
Chapter5
【挑戦。環境・エネルギー分野】
田口の視線は、その先も見つめている。
現状に甘んじることなく、新しい用途開発を進めていかなければならない。
その先にあるのは、太陽電池・LEDなどの【環境・エネルギー分野】だ。
環境分野では、“無鉛化の推進”は必須である。
いまや世界標準である、といっても過言ではない。
性能を落とさず、コストアップもしないことが重要になる。
これからも、ガラスならではの特性を活かし、
◆独自の組成開発(成分の組み合わせ)や改良
◆環境・エネルギー分野などの新たな用途開発
“創業メンバー”挑人・田口の思いは果てることはない。