/挑人/

広栄社

稲葉 修
/Osamu Inaba/

歯間ようじ- ドクターピック : 広栄社 /Profile/
1942年3月31日大阪生まれ。京都外国語大学英米語学科卒業。1966年広栄社入社。1985年代表取締役社長就任。1990年「つまようじ資料館」を設立。1998年『楊枝から世界が見える-楊枝文化と産業史-』を出版。 「一本のつま楊枝から資料館には毎年1000名以上が来館し、地元の小学生の社会科見学のスポットになっている。連綿と続く多くの交わりの輪に感謝している。」と語る。

開発商品

歯間ようじ- ドクターピック

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STORY
/挑人ストーリー/

日本製-高付加価値つま楊枝~8020への挑戦

課題
一ドル=360円の時代。
日本の高度成長期は、国内の安い労働力を背景に、低コストで生産し海外に輸出していった。
多くの企業が、自助努力と為替によって成長することができた。
1971年から一気に円高へ向かう。激震が走る。
広栄社も昭和の初めから輸出をはじめ、ピーク時で95%が海外での売上高であった。

“つま楊枝”という一見何の変哲もない商品の中にある、秘められたドキュメントを探る。
そこには、日本での生産にこだわり続けている一人の挑人の姿があった。

Chapter1

【海外市場で現地・現物・現場を学ぶ。】

挑人稲葉が29歳の頃、ヨーロッパを中心に販売していた。

日本では1種類のつま楊枝は、海外での分類は3種類だ。
歯に詰まったものを押し出すための平楊枝TOOTH PICK、歯についた歯垢を取るための三角楊枝をDENTAL PICK、料理のオードブルにさすための丸楊枝COCKTAIL PICKと用途によって使い分けられている。
日本でつま楊枝は、まな板や包丁などと同じ売り場に存在している。つまりCOCKTAIL PICK(カクテル・ピック)なのだ。
海外では、通常のつま楊枝(三角楊枝:DENTAL PICK)は、薬局でオーラル・ケア商品として存在している。

「日本では、爪楊枝はおじさんが使うものという認識だが、海外では、若い女性もオーラルケアとして定着している。」
現地に来て分かったことだった。

三角楊枝を製造していた稲葉は、ヨーロッパの歯ブラシを製造しているメーカーに売り込みをかけた。
順調に、販路を拡げ、売上は伸びていった。

「マーケティングの基本は、現地に足を運ぶことだ。」

この時に学んだ、マーケティングの原則であり、基本だった。
後にこの体験が、日本での市場開拓のヒントになるのだった。

Chapter2

【円高で一気にピンチに。】

海外市場しか知らなかった挑人は、懸命に、コストダウンのために、生産の合理化をした。
限界があった・・・。

国内市場に目を向けざるを得なくなった。しかし、大阪(河内長野)にはたくさんの爪楊枝製造業者が存在し、仲間との争いのために、コストダウンするという泥試合は避けたかった。

「国内に新たな市場を創造するしかない。」
ヨーロッパでの経験を糧に、新たな市場を開拓する日々が続く。
今まで、日本ではなかった歯間清掃用具のアイテムとして、大手歯ブラシメーカーに売り込んでいった。
OEM商品としての提供だ。
持前の明るさで危機を脱した。

しかし、結果的には、あくまでも一時凌ぎとなっていった。
どうしても、海外製の安いものに切り替えられるケースが多くなっていくのだった。

Chapter3

【“楊枝メーカー”から“オーラル・ケアの専門メーカー”へ】

OEM商品として提供すると、ブランド・オーナーの戦略に左右される。
「高付加価値商品の開発をしなければ生き残りの道はない。もはや自社ブランド商品に賭けるしかない。」

1985年、社長に就任した挑人稲葉は、まず商品のコンセプトを決定した。
そして、『クリアデント』という自社ブランドを発表したのだった。

三角楊枝の新しいチャネル開発がスタートした。

積極的な動きが功を奏して、大手小売店との取引も始まった。
が、売れないのである。

日本人にとってのつま楊枝は、“丸楊枝で丸い容器に入ったもの”だった。
実に、10年間、展示会にも出店し、ありとあらゆる販路を模索していった。
しかし、販路が定着しない。

そんな頃、展示会で知り合った人から、
「薬局で販売すれば育つかも。この商品は、対面販売している所じゃないと根付かない。」
確かに、薬局は、対面販売をしている。ヨーロッパでは、薬局で販売していた。
「これだ!」

Chapter4

【産学官連携でヒント】

21世紀を迎え、挑人の戦いは続いている。
海外でも使用されている“三角楊枝”の浸透を目指していた。

そのために、販路開拓を模索し展示会に出展している。
大手企業のバイヤー(購買)は興味は持ってくれるものの、値段の高さで、断念していく。
「通常のつま楊枝と比べてこれだけ価格が違うと上(上司)を説得できない…。」

大阪府中小企業家同友会、異業種交流組織“オンリーワン研究会”のメンバーの一人が「すべて三角にするんではなくて、日本人が慣れ親しんだ丸い楊枝の先端部分を三角にしたら…。」

また、知り合った大学の先生から、
「日本では、日本仕様にアレンジしないと売れませんよ。」

時期を同じくして、立て続けにコスト面と商品デザイン面の指摘があった。
その言葉の数々は、挑人にとって、「神の啓示に聞こえた」という。

Chapter5

【更なる開発は続く。】

『先端部分のみを三角にする。』
これが難しい。
2004年龍谷大学理工学部と開発した。
断面が二等辺三角形の楊枝を一秒間に15本生産する体制が整った。検査工程では、レーザー光で楊枝の影から先端部分の高さを調べて0.5~1mm以内に保っている。
2004年、長年の三角楊枝のノウハウと日本の丸楊枝を加味し、『歯間ようじ-ドクターピック』が完成した。

その後、更なる開発が続く。

歯の表面には、1ミクロン程度の穴が無数にあり、茶渋やコーヒー・煙草のヤニなどが付着する。一方、歯ブラシの毛先は、穴より大きい。そして、歯磨き粉の粒子も10ミクロン程度だ。
この問題を解決するために、広島大学歯学部・歯科医師・企画会社と広栄社の合計4社で共同開発した。
これが、全く新しい歯の美白ブラシである、『歯のピーリングスポンジ』である。
経済産業省の“新連携”の認定も受けている。

安価な中国製品押されることなく、生き残りのため【高付加価値の商品開発】を心がけている。
“小さなつま楊枝”との出会いから端を発した、挑人稲葉の“大きな挑戦”は果てしなく続いていく。

/プロジェクトの今後/

「厚生省は、80歳で自分の歯を20本残そうと『8020』運動を推進している。
しかし残念ながら日本の現状は、『8008』だ。ちなみにアメリカは『8016』、スウェーデンでは実に『8018』だ。日本は予防歯科という概念では、後進国だ。
ここを何とかしたい。」と語る挑人稲葉。

「歯のケアの差は歯を守る道具、すなわち“楊枝の差”であるというが持論だ。
まずは、つまようじを明確に用途によって分けることが必要だ。
 ■丸い楊枝 COCKTAIL PICK(カクテル・ピック)で料理用
 ■三角楊枝 DENTAL PICK(デンタル・ピック)で歯科用
健康のためにも、環境のためにも、自分用の楊枝を持ち歩くことが重要。」と熱く語る。

『一生自分の歯で食べる』啓蒙活動は今後も続いていく。

/会社訪問/

〈写真左〉【つまようじ資料館】に行けば、 間違いなく【楊枝から世界が見える】
〈写真右〉世界に一台の『三角楊枝自動製造機』の前で熱く語る後藤工場長。

一路求真~楊枝から世界が見える

会社にお邪魔するやいなや、「まず、資料室を見て頂きましょう!」と案内されたのが、ご存じ【つまようじ資料室】。
本当にすごいんです。
是非一度、行ってください!
社長に「入館料とれますよね~。」と聞いてしまいましたが、
社長いわく、「タダだから、徹底的にサービスしょうと思ってる」とのこと。
毎年1000名以上訪れる方々の芳名録が本当の財産なのかもしれません。
まさに、【楊枝から世界が見える】気がします。
ひとつのことを追求すると、これだけ世界が広がるんだと思いました。必見です。
本を読んでから行くとより分かると思います。
お話をお伺いしながら、社長のメッセージが分かりました。
(1)お客様の方を向いていれば、日本でも生産は可能であることを分かってほしい。
(2)予防医学を分かってほしい。
(3)入口はどこでも、歴史・地理・医学・文学…勉強してほしい。
(4)子供たちに本物を見る目を養ってほしい。

後半は、工場見学させて頂きました。
設備ほとんどは、社内での手作りですって。これも驚きです。
本当に、機械設備も非常に大切に使われていました。この機会設備の製作&メンテナンスに当たっているのが、後藤幸雄工場長。
「新製品の“歯の美白ブラシ”の製造機械は3ヶ月で製作した世界でひとつの機械。もう一台は、後輩の白浜洋平がさらに進化させた。」

最後に、CREARDENTシリーズを一式頂いたのですが、頂いたその日からファンになってしましました。毎日食事の後に三角楊枝使ってます!
【お買い求めは…】
・東急ハンズ各店
・阪神百貨店(地下1階薬局)
・ジャスコ・イズミヤ・平和堂の歯ブラシ売り場
広栄社ホームページ

Corporate Data/会社概要/

会社名株式会社広栄社
URLhttp://www.cleardent.co.jp/
設立1917/1/1
代表者稲葉修
資本金1000万円
商品分類医療関連 - 化粧品・生活用品
従業員数20 名
事業所大阪府河内長野市上原町885
お問い合わせ先代表取締役社長 : 稲葉 修
お問い合わせ電話番号0721-52-2901
お問い合わせFAX番号0721-54-1092
経営理念予防歯科【8020】運動(80歳で自分の歯を20本残そうとする運動)の推進を通して、オーラルケアに貢献する。
主な事業歯のピーリングスポンジなどオーラルケア用品の製造・販売

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