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/挑人/
大洋製器工業
梶 大樹
/Taiki Kaji/
/Profile/
1976年9月11日生まれ。泉州高校(現 近畿大学泉州高等学校)を卒業後、多様な職種を経験し、1997年にワイヤロープの代理店に勤める。その就職をきっかけに、2005年、大洋製器工業に入社。顧客のニーズを踏まえ、『安心・安全・信頼』をモットーに、営業活動に励む。私生活では、家族や友達とキャンプに出掛けるなど、アウトドア派。その中で割り当てられた役割を、自信を持って果たす責任感が、仕事にも活かされている。
開発商品
Vフック
開発商品詳細はこちら
STORY
/挑人ストーリー/
新たなデファクト・スタンダードの創造-“こだわり”からの脱却と創造
課題
1990年代、バブル崩壊後に広まった「グローバル・スタンダード」。
金融にしても、工業製品にしても、日本国内にとどまらず、広く世界へと目が向けられるようになった。
その流れが、金具業界にも影響を与え始める。
さかのぼること約10年前、金具や吊り具を製造する大洋製器工業の競合として日本に舞い降りた、ヨーロッパ製品。
「グローバル・スタンダード」の影響もあり、ヨーロッパから流入した製品が市場を席巻していく。
しかし、メーカーが日本にない海外製品だからこそ、現場で「何か」あったときに対応できる能力が乏しい。
そして現場では、その「何か」が起きてもおかしくない状況にあった。
使用荷重を超えた使用がされている、という場合もあったが、
何より、初期に開発された製品の形状がデファクト・スタンダードとなり、改良がなされないままの物が多かったのだ。
「どのような場所でも、どのような業種でも、安全に製品を使ってもらいたい。」
もともと30年前に開発され、市場にも浸透していた重量フック。
その重量フックにも、モデルチェンジのタイミングが来ていた。
Chapter1
【外部環境の変化に敏感であれ】
「根本的に考え方を変えてみたらどうだ」
当時の副社長が製造部(当時)に投げかける。
10年前から、ヨーロッパよりフックなどの金具が日本にも流入するようになり、
重量フックなどの金具の国内市場が荒れ始めていた。
そのような状況の中、30年前に開発された重量フックのモデルチェンジのプロジェクトが進められることとなった。
当時、普及していた当社の重量フックを含む環付フックが持つ問題点を、挙げられるだけ挙げていく。
・ラッチ(=外れ止め金具)の破損
・横荷重に弱い
・他の物へのひっかかり
・ロープへの負荷
・カップリング(チェーンとの接続金具)との相性
・セーフティラッチ交換修理の不便さ・・・・
新型の重量フックを製作するのだから、考え方を変えて、安全面でヨーロッパ製品の規格(=EN規格)に適合したものを。
2004年1月の終わり、こうして重量フックのモデルチェンジへの道のりが始まった。
Chapter2
【理想を限界まで追求する設計-商品の一度目の創造】
モデルチェンジが決まっても、なかなか、新型重量フックの形状を決めることができない。
設計を担当した坂本は、使用現場ではどのような形状のものが必要とされているかを調べながらも、洗い出した問題点を克服する新型重量フックの形状に頭を悩ませていた。
そのような状況の中で、胸に突き刺さる言葉も耳に入る。
「本当にモデルチェンジして売れるのか?」
それは、坂本自身も、自らに問いかけ続けてきた言葉だ。
だからこそ、痛かった。そしてその痛みを開発の原動力としてフルに活用した。
「誰もが納得するような新型重量フックを設計しよう・・・!」
2004年8月10日、うだる暑さの中、坂本は一枚の設計図を描きあげる。
それこそが、この後、重量フック各サイズのモデルチェンジへとつながる、1.25t用の【Vフック】だった。
Chapter3
【理想と現実を埋めるユーザーニーズ-商品の二度目の創造】
出来あがった設計図を元に、まずは木型で試作品を製作。1~2か月で、細かな修正をかけていく。
そして次は金型で、生産体制へと乗り込んでいく。
図面から実際の製品へ、息を吹き込まれていく新型重量フック。
形状だけでなく表面処理も「環境への配慮を」という考え方も導入して、ノンクロム塗装にもこだわった。
そして、ここからが、モデルチェンジした新型重量フックの正念場となる。
まずは市場調査PR用として、使用荷重1.25tの1サイズを1,000個試作し、市場へ。
試作した新型重量フックの課題点はどこなのか、調査をしていく。
営業は、新型重量フックを安心・安全なものへと作りこむため、現場の声を吸い上げていった。
外れ止め金具に改良を加えた。
だからこそ、その部分に課題が出るのは当たり前と言えば当たり前。
外れ止め金具を留めているロールピンが折れる、スプリングが折れる、という問題が約半年の間に発生。
さらに、ユーザーによって考え方や使用状況が異なるため、ニーズをどう改良につなげるかにも苦慮した。
安全を最重要視しながら、さらなる改良に追われる坂本。
さらに、現状の問題だけでなく、将来へのステップとして、2.0t用の新型重量フックの設計図も求められる。
まさに、目も回る忙しさを誰もが感じながら、しかし、そのような過酷な状況の中で、新型重量フックは目覚ましい成長を遂げていった。
将来、看板を背負っていくであろう製品の名称も、材質の等級が「V級」(※)であったこと、そして、“環付フックで他社に勝利(Victory)する”という意味を込めて、【Vフック】と付けた。
※V級とは、JIS規格で定められた等級のこと。V級は主にチェーン向き
Chapter4
【利益追求ではなく安全啓発こそがモデルチェンジの原点!】
大小さまざまな坂を登り終え、【Vフック】が次に登るべき坂が目の前に広がる。
成長した【Vフック】の晴れの舞台を飾る、営業活動だ。
従来製品の重量フックから、モデルチェンジをすれば、その分、製品単価が高くなるイメージが付きまとう。
「従来品で事故も起こしていないのに、今のままで十分ではないか?」
という言葉が、モデルチェンジした【Vフック】の行く手を阻んだ。
しかし、「安心」「安全」「信頼」を企業理念に掲げる大洋製器工業が、新たにたどり着いた【Vフック】の基準は、ユーザーの「安全第一」を考えたもの。
「たとえ安全率5倍以上の設定値があり、1t用フックを破断引張試験で8t以上の性能を出してきた
大洋クオリティーでも、間違った使い方をしているユーザーにはその間違いを指摘し、危険性を伝えて、安全軽視は事故の元であることを認識してもらう!」
営業を担当する梶は、あらゆる業種で、現場での重量フックを含む環付フックの使われ方を丹念に見て回り、そして、ユーザーにとっての「安全」を啓発し、営業活動をとおして、「安心」を普及していった。
そう、まさにそれが、大洋製器工業が掲げる企業理念に則った、「LST活動」(※)だった。
※LST活動…LSTとは、L=“Lift”(吊る)、S=“Secure”(固縛(とめ)る)、T=“Transport”(運ぶ)の頭文字。
吊る・固縛(とめ)る・運ぶ作業はあらゆる業種に存在する。
つまり、大洋製器工業の製品が活躍できる場は無限にある。
あらゆる業種に向けて提案営業活動を行うとともに、安全に仕事をしてもらうために安全啓発をしていく活動。
Chapter5
【原点=ポリシーから生まれる新市場】
新生【Vフック】が目指すのは、何も建築や土木、運送などの既存業界だけではない。
「吊る」作業は、どのような業種でも見られる作業に違いないのだ。
例えば、アミューズメントパークでの、モニュメントの吊り上げ、
例えば、工場、港湾等クレーンのある現場での吊り上げ、
例えば、風力発電設置現場での、高所へのブレード(羽根)の取り付け・・・
挙げだしたらキリがないほど、「吊る」という作業は、身近にある。
梶は、現場への目を凝らし、まったく新しい分野への進出を目論む。
大洋製器工業が得意としてきた既存業界だけでは、受注数に変化を加える事ができない。
新市場の開拓は、大洋製器工業の安定的な成長にも必要不可欠だ。
「どんな業種でも、上(リング)から下(フック・シャックル)まで、大洋製器工業でそろえてもらえれば、これ以上の安心はない!」
自信を持って営業活動に臨む梶。
梶が、そして大洋製器工業の社員一人一人が支える【Vフック】の鮮やかなオレンジ色が、私たちが生活するあらゆる場所で、目に飛び込んで来る日も近い。