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/挑人/
積水フィルム
鎌滝 悦視
/Yoshimi Kamataki/
/Profile/
1967年12月27日生まれ。日本大学経済学部を卒業後、文具業界の企業に就職。その後、2008年6月に積水フィルムに入社。入社後すぐ、営業を担当、多くの顧客の意見を聞き取り、高機能フィルム製品である開口維持機能付き滅菌バッグの開発へとつなげる。学生時代はバンドに熱中し、バンド活動を通して、仲間との絆を深める重要性、一人ではできないことを仲間と力を合わせて達成していく楽しさを体感する。
開発商品
開口維持機能付き滅菌バッグ
開発商品詳細はこちら
STORY
/挑人ストーリー/
“お役立ち提案営業”の神髄-『お困りごと』の徹底追及が起したシンクロニシティとは。
課題
2003年、新型肺炎ウイルスSARSの流行
2005年、新型鳥インフルエンザの世界的大流行
2008年、残留農薬メタミドホスによって引き起こされた食品事件
グローバル化の進展によって、各国の時間的距離が短縮され、人・物の移動が世界規模で起こるようになった。
それに伴い、世界各地で起こる事件が当然のごとく、日本にも飛び火する。
積水フィルムとして、高機能フィルム製品の開発を手掛けるメーカーとして、世に貢献できることは何か。
当時、積水フィルムが企業全体として視野に入れ始めた、医療関連やIT関連など新分野への展開、そして、その分野の中でのニッチNo.1。
ただ、連日報道される日本国内での外部環境の変化を見るだけではない。
そこに「お客様の声」という、現場での「お困りごと」を拾い上げ、開発へとつなげていく積水フィルムの姿勢をプラスする。
企業内部の変化、外部環境の変化の中で、今まで、積水フィルムの製品ラインナップになかった、新商品が生まれようとしていた。
Chapter1
【「お役立ち提案営業」へ“仮説営業力”を磨く】
2008年6月入社直後。
鎌滝は、飛び込み営業を繰り返していた。
当時、積水フィルムの新体制として、新分野への進出、そしてその分野でのニッチNo.1が打ち出されていた。
積水フィルムのこれまでの営業スタイルは、ラインナップされた製品を提案するスタイル。
新体制の下、お客様からいただく声を反映させた製品を提案する営業スタイル、「お役立ち提案営業」へと変化していたところだった。
鎌滝が注目したのは、打ち出された新分野の中にあった、医療関連分野。
医療関連のキーワードを頭の中に羅列し、それらのキーワードとフィルムとの関連を探る日々。
「何か需要はないか・・・?」
実際に、お客様のところに足を運びながら、鎌滝は、ある仮説にたどり着いた。
「SARSや鳥インフルエンザ、メタミドホスなど、生活を脅かすニュースが多い。
そこに何かの需要があるのではないだろうか・・・」
鎌滝は、検査機関にターゲットを絞り、検査機関での困っている点がないかどうか調査を始める。
実績も何もないところからのスタートだった。
Chapter2
【答えは現場にある-お客様の声が目指すべき将来の姿】
鎌滝の調査営業に対して、1社の検査機関が反応を示す。
問題が発生したとき、また問題が発生するのを防ぐために、検査機関ではさまざまなものをサンプリングする。
そこで、サンプリングバッグが利用されていたのだ。
鎌滝は、今、どのような状態でサンプリングされているのかを聞き取り、提案へとつなげるため、開発を担当する高浜と共に、その検査機関へと再度足を運んだ。
現状、感じている不便と要望を入念に聞きこむ鎌滝と高浜。
その検査機関では、国内・海外メーカーのバッグを使用していた。
しかし、どちらのメーカーのバッグも、納期管理や在庫管理、サイズ展開に問題があった。
その上で、さまざまな潜在ニーズ、顕在ニーズを聴きとる。
「滅菌済みにして欲しい」
「口が開いた状態は維持したいが、針金は使用して欲しくない」
「サイズ展開して欲しい」
「バッグからの影響を防ぐため、指定の物質を含まないで欲しい」
「封をしたことが一目で分かるようにして欲しい」
「何が入っているかなどを記入できるスペースが欲しい」
「やぶれにくい仕様にして欲しい」・・・
開発と一体となった営業活動の中で、製品のぼんやりとした姿が見えてきた。
しかし、本当に形にできるのか、鎌滝には分からなかった。
「気持ち的には、滅菌・針金の時点でKOでしたね。」
そんな鎌滝の横で、高浜はすでに製品を思い描き始めていた。
Chapter3
【イメージを製品に落とし込む-ゼロからでもスタートは切れる!】
高浜が、すぐに製品の形を思い描くにいたった理由は、高浜自身がこれまでに開発した製品にあった。
グループ会社である積水成型工業が扱っていた、形状記憶プラスチック「フォルテ」を使用した製品の開発を進めていた時期があったからだ。
2008年、紙コップの代替品として、口が開いた状態を維持できるように、「フォルテ」を使用した製品を開発していた高浜。
しかし、価格と製造プロセスの問題で、どうしても紙コップにはかなわず、2008年末に断念。
その時の記憶を呼び起こす高浜。
「フォルテを使用すれば、全てプラスチック製で環境にも優しい製品になる。」
口が開いた状態を維持する形状、そして企業としての社会的責任である環境への配慮は、難なくクリアした。
しかし、次に高浜の頭を悩ませたのは、「滅菌」だった。
これまでに、積水フィルムとして、滅菌した袋を扱ったことはあったが、市場には出なかった。
滅菌に関するノウハウが、高浜の周りにない。
高浜は、「滅菌って何?」というところから勉強を始めた。
フォルテを袋に張りつける方法を探りながら、一方で滅菌に関する知識を詰め込む、同時並行。
事業開発部グループ長である千東からアドバイスを受け、滅菌処理をしてくれる会社に連絡を取る。
勉強しながら、実際に滅菌のための条件を絞り込む。
一度に滅菌できる量は・・・?材質に変化が起こらない程度の滅菌処理の強さは・・・?
専門用語に悩まされ、さらに滅菌処理のイメージがなかなかつかめない高浜だったが、ついに2009年6月、引っ張り強さや伸び、引き裂きなどさまざまな条件の中から、ベストな製品を割り出した。
納入目標は8~9月。量産体制ぎりぎりのラインだった。
Chapter4
【やりながらの手直し。実践してみなければ結果は分からない】
開口維持機能付き滅菌バッグの形状が決まった直後、先行試作として600枚を作成。
当時、連続加工に使用される程の大量、長巻の「フォルテ」は積水成型工業としても初めて。
そのため、先行試作は600枚すべて、開発・工場の人員でフォルテを手貼りすることとなった。
その後、「えいやっ!」で連続加工、大量生産ラインへ。
袋の外に、プラスチックを張りつけた状態で袋状にする、という誰もが初めての経験。
袋とプラスチックの伸びの違いで「フォルテ」がずれ、ロスが出る。
機械をいじりながら調整し、やっとのことで納品量12,000枚が出来あがった。
「12,000枚、全て手貼りを覚悟しましたね。」
そんな決死の覚悟の中、お客様の元に届けられた開口維持機能付き滅菌バッグ。
次は、お客様からの評価を頂く段階だ。
「使ってみてどうですか?」
鎌滝、高浜はじめ、関わった全ての人間のドキドキが今にも聞こえてきそうな瞬間だった。
「全て良好です。」
肩の力が抜けると同時に、大きな喜びが押し寄せてきた。
その後、検査機関での使用に合わせて、指定物質を使用していないことの証明を、材料・製造工程ともに証明。
高浜自身、「無理っ!」と思いながらも、2か月で全てを証明しきった。
Chapter5
【お客様との感動の共有が次の展開を生む】
「なんでここまでやらないといけないんだっ!」
これまでの営業経験と「お役立ち提案営業」とのギャップに悩まされた鎌滝。
しかし、これまでの聞き取りから開発、客先への納品に至るまでを振り返り、鎌滝が漏らした言葉は
「苦労したけど、やって良かった。」
これまで、お客様の規格ありきで営業を進めてきた積水フィルムにとって、初の企画品となった開口維持機能付き滅菌バッグ。
それは、事業部全体で、積水フィルム全体で、そして積水グループ全体で、お客様に対応できる製品開発ができる、ということを証明した製品にもなっていた。
嬉しいことに、当初、飛び込み営業の際に反応を示し、製品の開発のきっかけを作ってくれた検査機関の人が、製品の良さを、他の多くの機関に紹介してくれた。
お客様から感動をもらう、そしてその感動が次の展開を生む。
鎌滝の、高浜の、ひいては積水グループ全体の努力が、口コミという形で認めてもらえたのだ。
これまでの【袋=包装】という概念を超え、【袋=機能】という概念をも生み出した、開口維持機能付き滅菌バッグ。
積水フィルムの中でも、新分野への展開に合わせた、チャレンジ精神溢れる製品にもなっている。
現在、そんな開口維持機能付き滅菌バッグを片手に、鎌滝は奔走している。
向かう先は、釣りなどの趣味の業界、ペット関連業界、食品業界、医薬品業界など、様々だ。
目指すは、積水フィルム製品の中で、核の一つとなるような製品。
開口維持機能付き滅菌バッグが、国内だけでなく、世界で使用される日を夢見て!