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/挑人/
TOA
阿井 雅和
/Masakazu Ai/
/Profile/
1967年10月26日生まれ。津山工業高等専門学校(津山高専)卒業。16歳からハンドボールをはじめ現在はクラブチームを自らたちあげて続けている。スポーツで培ったチームワークが今回のプロジェクトの成功に繋がっている。
開発商品
ワイヤレスマイク プレストーク型 WM-1420
開発商品詳細はこちら
STORY
/挑人ストーリー/
夢が詰まった冒険の物語-決断・実行・組織力が支えたリニューアル
課題
昔、パチンコ店での“あおり放送”に使われていたプレストーク型ワイヤレスマイク。
(※プレストーク型とは…ボタンを押している間だけ放送できる型式)
しかし、時代の流れとともに“あおり放送”が衰退しつつあるアミューズメント施設。
もちろん、その施設での使用頻度も下がり、売上への影響が心配されていた。
ちょうどその頃、ドラッグストアからのリニューアル要請が舞い込む。
断線の防止、胸元でオン/オフを切り替えるスイッチの取り付け、ハンズフリー・・・
調べてみればプレストーク型も、物販店での利用が大半となっていた。
しかし、商品の使用状況が見えてこない。どのように使われているのか。
現状を知るための“開発者とプロダクトーマネージャーの市場調査”と、ドラッグストアを巻き込んでの共同開発が始まる。
マーケットリサーチ(市場調査)によって見えてきたものとは・・・
開発・営業の中で、忘れてはいけない遊び心とは・・・
これまでのワイヤレスマイクの常識を破る、抜きんでた機能・デザインに秘められた“冒険”に迫る。
Chapter1
【顧客からの“Re: Quest”-再び始まる開発】
2006年3月。
九州のあるドラッグストアから「もっとドラッグストアで使い易いマイクを作って欲しい」という要望が舞い込んだ。
確かに多い、修理依頼。
電気回路設計をしてきた妹尾が訪問し、使い込まれたマイクの状況を目の当たりにする。
現行品ベースの特注仕様を提案し、サンプル評価してもらうなど一時は進みかけたが、最終的には要望を100%満たすことが出来ず、採用見送りとなった。
頭の片隅に、いや、ど真ん中に残る、もやもや。
1年が過ぎた頃、他社製品への置換えを危惧したTOAは、再び九州のドラッグストアを訪問した。
無線開発課長の田中、プロジェクトマネージャーの山内が、苦渋の選択の結果、出した答え
「我々といっしょに作っていきましょう」
という提案を持ちかける。
機構を担当する阿井をチーフとし、電気回路担当の妹尾、ソフト担当の北村、課を取りまとめる田中と山内で結成された「どげんかする!」プロジェクトチーム。
ここから、TOAの新たな開発スタンスへの挑戦が始まった。
Chapter2
【「顧客と一緒に開発する」いう解決策-机上では終わらない現場主義】
決定したリニューアル。
(自然と)「売れていた商品」と(営業が)「売ろうとする商品」は違う。
「営業が、積極的に売りたくなるような商品にしよう!」
しかしながら、売れ筋商品だからこそ、リニューアルは怖い。
「他社よりちょっと良い」だけでは、乗りかえられてしまうかもしれないからだ。
「圧倒的にいいもの」の創造が、彼らに与えられた使命だった。
各地の駅や物販店の、市場調査を進めるチームメンバー。
その中で、九州のドラッグストアだけでなく、栃木県の
カワチ薬品と、静岡県の
杏林堂が、共同開発に参戦。
「基本的な耐久性をもっと向上させて欲しい」
「ハンズフリーで話せるようにして欲しい」
「ズボンのポケットから出しやすくして欲しい」
過酷な使用環境での耐久性と店舗運営などおける使用用途の多様性-。
試作機をドラッグストア店舗に持ち込み、半日、現場に付きっぱなしということも、ざらにあった。
パート女性が、想定外の持ち方をしてマイクを使用している現場も見た。
店舗を観察する中で、
顧客も気づいていない【潜在要望】があることにも気づいた。
「シーンに合わせて切り替えられるようにしよう」
「放送前にマイクを無意識に叩いている人が多い。
話者がマイクを叩かないように、また来店客にも販売促進放送の注意をひきつけられるように、放送前にチャイムをつけたらどうか?」
「特売チラシの販促放送時は、スイッチを押しっぱなしも疲れるだろうから、なんとかしよう」
プロジェクトメンバーは、宝塚を拠点に、九州、浜松、栃木を何度も往復。
夢いっぱいの構想が、共同開発の中で、生まれた瞬間だった。
Chapter3
【突き動かされる衝動。爆発するチャレンジ精神-トップメーカーの呪縛を破れ!】
ある程度、コンセプトが固まった。デザイン会社とも議論を繰り返した。
そして、デザイン会社から上がってくる商品デザイン。
一つは、従来と同じ“縦長のデザイン”。
そしてもう一つのデザインは、度肝を抜く“湾曲したデザイン”。
まるでバナナのようだった。
開発負担を考慮すると従来通りの“縦長のデザイン”という無難な意思決定を予測していた山内は、その結果に度肝を抜かれた。
開発メンバーの誰もが、湾曲したデザインを選んだのだ。
「驚かしてやれ!」「チャレンジしてやれ!」
普段は隠している遊び心が、一気に噴き出した。
2009年、メンバー全員で、清水の舞台から飛び降りた。何かが吹っ切れた。
さっそく模型となるモックアップを持って社内調査。
「他社には絶対にないものを作りたい!」
営業も含めたデザインレビューを通過し、開発と営業との本当の連携プレーが始まった。
Chapter4
【夢は叶うものではなく、叶えるものである-理想的な部門間連携】
まずは、いちばん要望の多い耐久性へのチャレンジ。
阿井は、落としても中に入っているプリント基板に実装されたパーツへ、直接的に衝撃が加わらないように、プリント基板を本体ケースから浮かせた状態にし、衝撃を吸収できるようにした。
また、夢を盛り込んだ、たくさんの機能が全て実現できるように、デザインへの配置を決めていった。
無駄なデットスペースは作れない!
多機能にしたため、従来から比べると1.5倍の部品点数に悩む妹尾。
機能を説明する文言をどこに入れるか、限られたコスト制約の中でチャイムを出す方法、どんな音にすればいいのか頭を抱える北村。
数十種類のチャイム音作っては、メンバーが集まり、開発居室ではなくドラッグストア環境に近い自社食堂で確認した。
「どうすれば、このマイクの良さを市場に伝えられるか?」
プロジェクトメンバーの意見を元に、カタログ構想を膨らませる販売企画担当の東。
プロジェクトチームが一体となって、夢を実現するための開発が続いた。
その間、プロジェクトの実質的な責任者である田中が、自ら全国5箇所で開催した商品説明会に出向き、開発のコンセプトや背景を説明して回った。
田中が伝える、開発チームのチャレンジ精神。
田中の本気に応えて、垂直立ち上げのために奔走する営業メンバー。
それぞれが、それぞれの役割だけを主張することなく、「みんな同じTOAの社員やないか!」という仲間意識の中で全力を尽くしていた。
~マーケットリサーチ(市場調査)を実施した開発メンバー。
~開発のプロセスにも参画している営業メンバー。
そこには、新商品開発の現場でありがちな「営業が悪い」「開発が悪い」といった不毛な議論は無かった。
Chapter5
【プロ集団が描く夢とは】
「市場調査を兼ねての開発は新鮮でした」
自分の目で見て、自分の耳で聞いてきた現場の生の声に、営業の役割を再認識する阿井。
「営業のメンバーが、すぐに動いてくれたことが、素直に嬉しかった」
徹底したマーケットリサーチがあったからこそ、営業メンバーも動きやすかったのだろう。
そういった開発が、真の開発なんだ、ということを実感し、開発メンバーの自信となった。
2010年11月12日、正式にリリースされたWM-1420。
さらに嬉しい出来事が続く。
営業から開発メンバーに宛てて、
「入札案件が取れた!」というメールが入った。
開発も、営業も、一緒になって進めるWM-1420の市場浸透。
売れた、という嬉しさだけでなく、喜びを分かち合うメンバーがいることが嬉しかった。
どんな冒険でも、一緒に乗り越えていく仲間がいれば、怖いものなどない。
開発が見た夢を、お客様と一緒に紡いでいく営業に、不安と言う文字はない。
今日も、どこかで夢が紡がれている。